Web原理

参考

Web原理-あるいはWebの善悪二面性-

WebにはWebは悪そのものである*1とかWebは善悪の両面を持つが自分にとっては悪*2であるという意見は存在しません。いや、存在しないというわけではなくて、非常に数が少なかったり説得力に欠けているので、無視されているのです。なぜに少数だったり説得力がないかといえばWebが悪だと考えているならWebを使っていないはずだからです*3。従って、Web利用者の意見としてはWebは善である*4か、善悪の両面を持つが自分にとっては善であるという意見だけであるということが出来ます。*5

要約

Webは悪という人はWebにはいない。

一般化されたWeb原理

以上のようなWeb原理*6を(任意の道具についても整合性が取れるように)一般化すると、ある道具を使用することで得られるベネフィットがコストよりも大きければそれは善であり、コストの方が大きければそれは悪であるというコンセンサスがオンラインにおいては得られるはずです。理論的には任意の道具のリスクを無視する人がWebに存在しても良いはずですが、まあ現実にはいないと考えて良いですね。
実際には「お前以外の人間は全員お前じゃお前じゃねえんだよ」の法則が働き、ある道具を使用する人間にとって利便性などのベネフィットがコストよりも大きいので使用することは善ですが、他者にとっては(その道具を使用しないので)ベネフィットの方が小さいので悪であったり、その道具を使用しないのでリスクの判断が出来なかったりします。具体例をあげると、ゲーム脳ですね。しかし、話を使用者あるいは使用経験があるものに限定すれば、「嫌なら使うな」*7は議論に終止符を打つためによく使われるキーフレーズであるように、Webにおいては0か1かではなくどうすれば閾値*8を超えられるかだけが意味を持ちます。なお、例外的ですが逆に使うべきでないと強く主張する人が多い道具もあります。例えば、(一般論としての)テーブルレイアウトですね。この場合は批判者は(論理的に矛盾していなければ)その道具を使用していません。議論は閾値がどこであるかということに集約されます。頭ごなしに否定する人もいますが。
以上のような理由から、旧来のマスメディアでベネフィットを無視してなにかが否定されると、Webではベネフィットを評価したり、悪用する人間が悪いとか例外を誇張しているとか統計を誤用しているとかコストを正確に見積もろうとする議論がよく見かけられます。

要約

コストとベネフィットを比較して善悪の判断をするのがWebでの誠実な態度。

具体例

リフレ

口銀の中の人を除けば、基本的に全ての人への(パイが大きくなると言う)ベネフィットと政策失敗リスクによるコストはほとんど変わりません*9。従って、リフレ政策に対する意見はベネフィットとコストのどちらが大きいかという話になるはずです。実際にはマクロ経済学の知識に対するアクセス格差が存在するため、少数のリフレ派と少数のアンチリフレ派と大多数の無関心派に分かれます*10。「嫌なら使うな」はナンセンスですから、リスクを軽減する方策を提示したり(インフレターゲット政策の導入)、あるいはデフレに逆戻りさせること*11などで得られるベネフィットを増やすことがリフレ派の戦術になります。逆に、アンチリフレ派はリスクをあおったり、経済成長を実現させることでリフレ政策によるベネフィットを減らす*12ことが戦術となります。無関心派は経済学に対する知識を得ることでリスクとベネフィットの大小判断ができてしまったら、どちらかに対して支持することがネット上での誠実な態度です。

消費者金融

「コストとベネフィットを比較して善悪の判断をするべき」だと主張。一面しか見られていない(あるいは軽視されすぎな)例として、リフレ政策、就活サイトを例に出している。最近の話題だと消費者金融もそうかな。

との示唆をid:takahata_kazuoさんからご教示いただきましたが、既に熱い議論がhttp://bewaad.com/20060422.html#cで熱くかわされておりますので、そちらにお任せしたいと思います。
でも、私にはどう考えても消費者金融によるコストと消費者金融によるベネフィットが釣り合っているようには見えないのですが。とりあえず、ベネフィットとリスクを列挙してみましょう。
消費者金融によるベネフィット

  • 合法的に多くの人間に少額の貸し付けが出来る
    • それにより非合法業者の駆逐が期待できる
  • 所得の平準化
    • という意味ではサラ金はそのうちパート金に変貌するんだろうなあ

消費者金融によるコスト

  • 消費者金融の利用による信用情報の汚染
    • これがある限り、私は消費者金融を使うことはないでしょう
      • というか、クレジットカードですら(略)
    • あなたの信用情報を売ってくださいと言われたらいくらで売りますか?
  • 一部の規制を逸脱した取り立て
    • 一部とはいえ、あの会社は取り立てが厳しくないらしいからあの会社で借りようという話は聞いたことがないので、消費者側では回避不可能
      • 自衛あるのみ
    • これは純法律論的にどうにかなるかと
  • 規制内だが社会通念的にグレーゾーンな取り立て
    • これの裏には某組織がという話を聞いたことがあるのですが、また陰謀論かと言われるのでやめておきます

やっぱり、必要悪じゃないですか。しかし、個人的にはグレーゾーンを下方向に詰めることは賛成しかねます。印象論ですが、都銀系列で寡占になるよりは中小がたくさん存在した方が市場原理が働きやすいのではないかと。

ところが

最近は利便性とリスクを比較しないでリスクを強調した記事注目を集めています。それに対して旧来ならベネフィットとコストを比較すべきだという警鐘を鳴らすべき有名ブロガが無批判にリンクしています。なぜでしょうか?ということを書きたいのですが、それを書くにはリソースが足りないのが残念です。

まとめ

ある道具のお世話になっている以上、他の道具についてもコストとベネフィットを比較して善悪の判断をするべき。
ある道具についてコストとベネフィットを比較して善悪の判断をしたならば、他の道具についてもコストとベネフィットを比較して善悪の判断をするべき。
なんらかの理由である道具を使用するとデメリットの方が大きいならば、使うのをやめるのか、代替物を探すか、メリットを大きくしたり、デメリットを小さくするべき。
"Use the Force, Luke. Trust your feelings!"

追記

そのうちWebを善側に賞賛しすぎることへの戒めを書きます。

*1:ベネフィットを無視してリスクを強調する考えのこととここでは定義する。以下同様に善悪を定義した。

*2:悪用でき、そのリスクなどによるコストがベネフィットを上回っているという考え

*3:例外はもちろんありますが、それらは初心者だったりとか(従来のマスメディアの人間などによる)ポジショントークだったりするのでやはり説得力が乏しいです

*4:悪用されことがあるのは悪用する人などなんらかのWeb以外の存在が原因であってWeb自体に罪がないという考え

*5:Webが善であるか悪であるかという議論に馴染めなければWebは不便だとかWebは使えないとかWebはお金がかかるとか、逆にあのサービスはWeb2.0であるとかなんとか2.0なんだとかそういう議論に置き換えてください

*6:命名しました。Webの原理ではなく、あくまで(弱い)人間原理のWeb版です。

*7:これの建設的なバージョンとしてリスクを軽減する方策をアドバイスしたり、言い出しっぺの法則を利用することでベネフィットを増やすなどの方法によって大小判断を逆転させることがあげられます

*8:コストとベネフィットの差が無くなる点

*9:Web利用者の大多数は資産家ではありません

*10:現実には積極的にリフレ政策にコミットする発言はしないがリフレ政策を支持している親リフレ派と呼ぶべき存在がそれなりにいるのですが

*11:冗談です

*12:だからじょうだんですってば