会社でえらくなるタイプ - 常夏島日記を見て思いついたネタ

失うことから全ては始まる。

その時が来たら
私は血も心も捧げます

正気にては営業ならず

憎い 憎い憎い

サラリーマンはシグルイときたもんだ。

その年の新入社員十一職種二百二十名
リストラによる死者八十名
過労による死者六十名
事故死二十名
生還六十名 中二十名重症

荒山徹編 「駿河財閥の驚くべき実態」より

マーケットはすでにグローバル
かかるご時世に創業者様ゆかりの
この駿府工場の庭先を血で汚せば(社員を解雇すれば)
労働組合への対決と受け取られましょう
さすれば お家の一大事
されば…
肩たたきの候補になりかわり
それがしがお見せつかまつる

リストラのもたらすものは
つまるところこのようなもの
それとも社長は…
従業員の命を引き替えにされても
このようなものが御覧になりたいと仰せられるか?

暗君…

平成十八年一月 取締役二名辞職

企業社会の完成形は少数のサディストと多数のマゾヒストによって構成されるのだ

不屈の精神を持ったサラリーマンにあっては
自己(おのれ)に与えられた過酷な運命(さだめ)こそ
かえってその若い闘魂 (たましい)を揺さぶり
ついには…

それはおよそ一切の流派に
聞いたことも見たこともない
奇怪な構えであった

ああ
あれこそは伊良さま必勝の構え
土下座のお姿…

下請けのもの 丁重に扱うべし
潰すこと まかりならぬ
伊達にして帰すべし
かかる者の姿は「タイガーアイ強し」を世に知らしめ
社会的名声を高むるに至るなり

ようやく 真の会社に めぐり会い申した
無職の月日 今は悔ゆるのみ
今日ただいまより 入社させて頂きたく…

面接会場は芝居をするところではござらぬ

このとき耕作が見せた契約実績は
通常の値引きによって到達しうる領域を明らかに凌ぐものであった

今 何と申した?
三重が何だと?
あやつさえ男子(まとも)に生まれておれば……今頃…

「あの折 顧客を逃した恨み
忘れようとて忘れられぬわ
舟木の会社
根絶やしにしてくれる」

果たして虎眼は正常なのだろうか
かつて倒した相手におう吐をもよおすようなこの執念

企業城下町 掛川を血に染める猟奇事件
"小夜中山鎌鼬"の幕開けであった

タイガーアイは最小の賄賂で転ばす
三千万用意すれば人は死ぬのだ

「止めにいたすか耕作
課長への昇進 止めにいたすか」

「部長
耕作はこの日のために営業してまいりました」

最年少で課長となって会長の眼に留まる
そして政略結婚の末に取締役
タイガーアイをしゃぶりつくし
やがては天下の伊良耕作となる!

野心である
野心がモルヒネのように激痛を麻痺させているのだ

ち、ちがう!
こは課長昇進などではあらぬ

な…
な、何ゆえ?

全身を硬直させた耕作
その脳裏によぎるものは
指で搦めて目で堕とした情女たち

タイガーアイ本社内で死体が発見された場合
その犯人として最初に疑うべきは外部の者ではない

涼之介の葬儀に
父 惚左衛門は幽鬼の如き表情を浮かべ
虎眼は曖昧なまま列に加わった
棺を白布で包み涼之介を担ぐのはタイガーアイ幹部たち