世界は魔王に満ちあふれている
なぜ魔王は世界征服に失敗するのか。あるいは、なぜ魔王は世界征服を急ぐのか。
タイムスケールの問題ではありません。そもそも、すべての魔王が永遠の生命を持っているかというと、
- 人間的な死亡要因(病気や老衰)などを持たない=魔王的な死亡要因(勇者に倒されるとかあるいは人間には想定できないたぐいのもの)が存在する
- 封印などのコールドスリープが存在する
- 生命力が強いことと永遠の生命とは質的に異なる
などの観点から疑問です。しかし、多くの魔王が世界征服に必要なタイムスケールよりも桁違いの長い寿命を持っていることは間違いないようです。
では、なぜ魔王は世界征服を急ぐのでしょうか。一つの原因は世界中に魔王は数多く存在し、それらが自由競争しているからです。世界は魔王で満ちあふれているわけです。もちろん、一部では勇者と魔王の癒着などの腐敗も残念ながら存在しているようですが、多くの魔王は自由競争のもと、己が手中に世界を収めようと日夜暗躍しています。そして、一度チャンスをつかんだら迷うことなく世界征服に立ち上がらなければライバルに先を越されてしまうのです。
もう一つの原因は世界征服の高度化および分業化が進み、昔のように魔王一人で全ての業務の面倒を見ることが困難になり、クライアントの世界をこうしたいという仕様に対してコンサルタントや営業、SE*1を含む大規模なチームがソリューションを提供するという事業形態になっていることが理由です。そうです。クライアントの早くカットオーバーしろという催促のために魔王は焦り、世界征服はデスマーチへと突入するのです。
ちなみに、なんで納期に間に合わずにデスマーチ化するというと
- 営業の安請け合い
- コミュニケーションの問題(あんなにプロジェクトに人員(しかも様々な種族な)を配置してコミュニケーションが円滑に進むわけがない)
- 競争激化によるダンピング
- 中間管理職の不足(新卒定着率が低い業界ですから)
- オフショア征服
- 非合法だから
最後の理由は現代的な軍事戦略を採用している魔王軍の最優先戦略目標が勇者でも軍でもなく、経済やインフラであるからです。勇者にしろ軍にしろいくら叩いても次から次へと湧いてきます。それよりは海中モンスターを配備することで通商破壊を行ったり、非戦闘員を殺害して生産力を奪ったり、道路や橋や水道などのインフラを破壊して国民生活を破綻させたりして、経済的には単に追い込むのが定石です。少なくともアメリカのビジネススクールの魔王養成コースではそう教えています。
もっと身も蓋もない回答
世界征服に成功した魔王のことは神と呼ぶから。
なぜ魔王は最前線(=序盤)に弱い敵、本拠地周辺に強い敵を配置しているのか
兵站の問題。
なぜ魔王は広告代理店と契約しないのか
上述のように世界征服は儲からないので、広告宣伝費を出せない。また、多くの広告代理店は既に勇者や勇者プロダクションと結託しているので、魔王の誘いには乗らない。
というか、勇者なんてものが実在しているとしたらその裏には勇者を勇者たらしめるために広告代理店が暗躍しているのが普通。
*1:世界征服エンジニアの略