背理法について

さすがにこれは放置しておけない。ここの2307を見てください。


[2307] 今回の食品安全委員会の答申は、背理法に逃げ込んだ苦しいもの。 投稿者:笹山登生 投稿日:2005/11/20(Sun) 19:04
虹屋さん。
アメリカ牛肉輸入是非のパブリックコメントを仕上げ中のことと思いますが、ここで、ちょっと、息抜き。
まあ、これは、虹屋さんが、[2302] 「2007年のBSEの新規感染数は、日本が米国よりも多い 答申案の暴露・増幅リスクの比較、飼料規制の効果の評価 」で、問題提起されていることとも、絡む話なんですが。

今回の食品安全委員会の答申は、まさに、背理法をつかった、苦しいもののようですね。
この背理法、有名なのは、来年からグリーンスパンさんに代わって、FRBの議長になるバーナンキさんの、インフレターゲット論の背理法ですね。

以下に、この背理法に当てはめて、今回の食品安全委員会の結論を分析してみますと。

背理法とは、次のような論理です。
「Pならば、Qである。」の真偽と、「QでなければPでない」の真偽とは、一致する
したがって、「PならばQ」を証明するには、「QでなければPでない」を証明すればいい。
そこで、背理法を使うと、
1.Qでないと仮定する
2.すると、Pでないことが導かれる。
3.これは、Pであることと矛盾する。
4.したがって、Qである。

ここで、
Pを「アメリカでのリスク管理が完璧」
Qを「輸入されるアメリカ牛肉は、安全である。」
とし、「「アメリカでのリスク管理が完璧」ならば、「輸入されるアメリカ牛肉は、安全である。」との真偽を問うとすると。
1.まず、「輸入されるアメリカ牛肉は、安全でない。」と、仮定する。
2.すると、「アメリカでのリスク管理が完璧である」ことはない、ということになる。
3.これは、アメリカ側が云う「アメリカでのリスク管理が完璧」であるということと、矛盾する。
4.したがって、「輸入されるアメリカ牛肉は、安全である。」

こうしてみると、なんやら、強引な結論付けですね。
多くの場合、この、背理法は、まやかし論理の正当化に使われるものなんですがね。
この背理法を打ち破るためには、「アメリカでのリスク管理が完璧」というようにニ値的に対比させるのでなくて、「アメリカでのリスク管理が何パーセント有効の場合」というように対比させると、背理法に逃げ込めなくなるんですが。
イギリスのOTMルール-生後30ヶ月以上の牛を食卓に回さないためのルール-を見直しの際、The Core Stakeholder Group からの報告では、そのような前提条件になっていたはずですね。

ご参考 バーナンキ氏が、「インフレターゲット」論で使った背理法
Pを「中央銀行が無限に国債を買う」
Qを「インフレが起きる。」
とし、「中央銀行が無限に国債を買う」ならば、「インフレが起きる。」との真偽を問うとすると。
1.まず、「インフレが起きる。」ことはないと、仮定する。
2. すると、「中央銀行が無限に国債を買う」ことで、全ての政府支出を中央銀行による国債購入代金で賄う事ができるので、国民から税金を全く徴収しなくても、国家運営が可能になる、ということになるのだが、そのようなことは現実不可能なので、、「中央銀行が無限に国債を買う」ことは出来ない。
3.これは、「中央銀行が無限に国債を買う」ことが出来ることと、矛盾する。
4.したがって、「インフレが起きる。」である。

どうコメントしたら良いのか分からないです。

ちょっと時間があるときにゆっくり取り組みたいと思います。

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