「就職情報の大学間格差生成装置としての就職サイト」?問題まとめ

私見

問題の卒業論文自体は架空登録ってどうなの?という倫理上の問題を除けば卒論としては良いものでしょう。で、倫理上の問題はGoサインを出した指導教員の責任ですね*1。当該論文を読んでいない段階では論文が悪用されたことには責任がないと考えています。しかし、架空登録を行ってデータを集められたことに敬意を表する人間は学者としてかなりどうかしていると思います。あと、優れた卒業論文だからといって優れた論文であるかどうかは別の問題です。
また、一般に公開されて*2いなかったり、入手が容易でないソースを元に議論を進めるのはネットでのお作法としていかがなものかと。これって、このデータが得られた年度のデータをもう一回取るのは不可能ですよね?もちろん、今年度に同じことをやれば同じようなデータが得られる可能性は高いですが、数値としての信頼性はどうかなあ。
http://d.hatena.ne.jp/yukihonda/20060414#p1学歴差別リクルートが作っていたんだよ!な、なんだってーーー(AA略)と解釈するのが正解かと。
どう見ても今まで調べるのが面倒だったことがインターネットのおかげで学部の卒業論文になるようになったというだけです。本当にありがとうございました。

http://diary.yuco.net/20060415.html#p01

労働問題を論じる学者さんとしてはちょっとずさんなのでは

去年から同じようなことを言っていたのに。みんな、気が付くのが遅すぎですよ。
基本的にはうなずけるんですが、最近の就職事情とは違っている部分が存在するので(いやもちろん元のコメントよりははるかにましですが)、ちょっと補足したいと思います。といってもこっちも限られた範囲で見聞きした話ですので間違っていたらごめんなさい。企業の採用関係者、就職活動中の学生さんのコメントなどは歓迎します。

就職サイト以外のルート

あげられていませんが、会社案内のはがき、封筒は生き残っています。といっても、どう考えても実際に送っているのは就職サイトを運営する企業ですが*3。まあ、就職サイト経由の情報と比べてコストがかさむのでより学歴によるフィルタリングが作用すると考えられます。

OB訪問

普通は一対一の説明会程度でしょう。参考

非公式ルートのOB訪問というのは、むかし広告代理店などの人気企業で行われていたらしいんですが、先輩が後輩の提出書類などの面倒を見ながら面接にあげていくというものです。後輩からコンタクトを取る場合も、先輩(というか会社員)側が「優秀な後輩を探して来い」と命じられる場合もあったそうです。まぁ、こういう形で採用がされていることはほとんど周知の事実だったようなので、非公式と呼ぶのが適切かどうかわかりませんが。

推薦

ほぼ絶滅。ランクの高い大学では束縛が嫌われ、Fランク大学には推薦依頼は来ないので。中間ランクの大学では生き残っているのかもしれませんが、どれぐらいだと生き残っているのか不明。
あまり拘束されない推薦は絶対数こそ少ないものの存在しますが、それって一般採用とどう違うの(ある意味推薦の原義には近そうですが)?

コネ採用

yucoさんは取り上げていませんが、現在公式のルート以外で最も太いのは多分コネ採用でしょう。学歴よりも遙かに強い差別なのに、就活サイトでは完全に無視されてますよ。これに関しては前からid:BUNTENさんが取り上げていましたね。
まあ、縮小傾向ですし、コネで入社しても(終身雇用を前提とする限り)高学歴採用以上に大変ですからね。

続編-就職サイト問題その2-

  1. 「自動的」で「大々的」だから就職サイトはダメ
  2. 就職案内冊子の厚さは目に見えるけど他人に来たメールの数は目に見えないから就職サイトはダメ
  3. 翌日の記事(持論の補強/批判への反論になってないのでは?)

を批判。

http://dorablue.blog51.fc2.com/blog-entry-258.html

あの方を学者さんと呼ぶのは個人的にはやめて欲しいです。この話の一番面白いところが東大出身者が学歴差別について議論しているところ。その辺、実情を知らないということはあんまり意味がないかと。

http://d.hatena.ne.jp/gluon/20060414#1145036509

理系で院に行けば推薦一つでどうにでもなる

なりませんと言おうと思ったら、化学系の人ですか。化学系ならまだ推薦もある程度は生き残ってますよね*4。でも、化学系だとあんまり院で学歴ロンダリングする価値はないんじゃないかな。B4の研究室配属の際にコネのある先生の研究室に頑張って入る方がコストパフォーマンスがよろしいかと。経済的にはお勧めしかねます。

追記

学校名によるスクリーニング - 常夏島日記

個人的にはyucoさんのエントリーよりもこちらの方をお勧めさせていただきます。

余談ながら、以前、私はこの先生のブログにコメントを書いたことがあるのですが、そのときの感想は、この人は社会活動家かコンサルタントの類としてはともかく、学者としての資質に相当に欠ける可能性があるというものでした。んで、こんな論理関係の倒錯をやらかすわけだから、私の直感もあながち間違いではなかったのかなーと思ったりしたのですが、もちろん、この先生が東京大学助教授として我々の血税を食んでいるのは、この先生個人の資質の問題ではなく、この個人を助教授に登用した東京大学の選抜基準の問題です。

やっとみんな言ってくれるようになったよ。

就活サイト叩きにみる手段と目的の倒錯 - 常夏島日記

これはいわゆる論点そらしに見えても仕方がないのではないかと。やはり学者としての資質(ry

4月14日のエントリに対してなされた批判への対論にはなっていません。

やっぱり、あの人は議論する気がないんじゃなくて議論が出来ないんだろうなあ。まあ、私も人のことは言えませんが。

就職サイト:今後の見通し - 常夏島日記


とりあえず彼女はこれらの問いに華麗なスルーをかます可能性がけっこうあると思います。
なぜなら、彼女は、ある論が正しいかどうかを問わず、それを言い募り続けることに意味があるという立場だから。
それならば取るべき戦術は(社会運動家のやる気に対抗するために)大勢で正しい批判を繰り返し続けることではないでしょうか。なにも向こうがスルーするからといってあきらめる必要はないわけです。たとえ、本人が誤りを認めることが無くても、周囲が学者*5ではなく社会運動家*6であると認識すれば相当の勝利でしょう。後は社会運動家としての社会的な影響力を考慮して、非学問的議論に移行するなり、自滅を待つなり、それこそいんぼうろんを流したり(もちろん最後はお勧めしませんが、社会運動家の多くが陰謀論に悩まされる傾向があるように見えます)いくらでも方法はあるでしょう。まあ、その段階になったら私は興味を全く持たないでしょうが。
あと、そういう立場にあるという見解には与しません。良くも悪くもあの人は天然なんでしょうね。ちょっと上にも欠きましたが、議論能力がないのでしょう*7。前の段落はそういう立場であるとすればという仮定の元での話です。

http://d.hatena.ne.jp/bluede/20060415/1145103357

採用の際のフィルターとしての学歴肯定論。

http://d.hatena.ne.jp/kanose/20060416/rikunab

就活サイトはあくまでスクリーニングをより強化するシステム

本当にそうでしょうか。就活サイトbefore、afterで学歴差別が緩和されているという話は聞いても強化されているという話は聞いたことがないのですが。結局、就活サイトがあろうとなかろうと基準以下の学生を企業は取るつもりはなく、リソースを節約するという意味においてはむしろランクの低い大学の学生の方が御利益に預かっているかと。

http://d.hatena.ne.jp/gachapinfan/20060416#p1

ここまできたら樹形図にしましょうよ。

就活サイトからの企業案内送付時点におけるステルス・スクリーニングは妥当か
├利用者を眩惑させるよ派(批判派)
└案内送付時点でのスクリーニングによって、情報格差を解決し、就職活動のコストを削減するよ派(支持派)
	└デューディリジェンスすれば気づくはずだし、気づかない利用者は企業にとって有用でないよ派(ウルトラ支持派)

個人的には支持はしてませんね。コストとベネフィットを比べて結論出すべきだと思ってます。学歴によるメールの数の比較だけではなにも言えないかと。

これで入社した人が「学歴は関係ない」「オレは学歴とは無関係に実力だけで入った」とか言うのは本当に勘弁。

ありそうな話。やっぱり優遇されている人の方が差別には気付きにくいんじゃないかな。

http://dorablue.blog51.fc2.com/blog-entry-262.html

10年間でだいぶ変わりましたね。結局、新卒採用に関してはマクロな企業業績(デフレといっても良いです)>就職協定>>(越えられない壁)>>人間力とかめりとくらしー化とかの影響なんですな。

高学歴=抵抗勢力

本田先生は今回のエントリで新卒一括採用で利益を得てきた高学歴層からの非難にさらされているわけです

笑った。ちょっと上に高学歴でも大変だっていうコメントがあるじゃないですか。

http://reflation.bblog.jp/entry/289302/

忘れてました。ごめんなさい。
mixi知らずに言いますけど、mixiで批判するのはあまり良くないかと。>「のびたさんの陰謀」

http://d.hatena.ne.jp/Yasuyuki-Iida/20060415#p1

忘れてました。ごめんなさい。
結局、どう切り口を変えても駄目だという意見。

http://d.hatena.ne.jp/mkusunok/20060417/carrier

長いので大事なところのみを引用。


本田先生のいうような職業能力による採用というのは,中途採用の枠組みでやればいいのであって,学生だろうが新卒だろうが中途採用の枠で申し込んじゃいけないという道理はない.企業は中途採用に対して即戦力を期待しているのだから,即戦力であることを示せれば採ってくれるだろう.企業は多様な人材を必要としているのであって,採用基準を透明にせよという主張自体が社会を学校化する危険性に,本田先生は気づいていらっしゃるのだろうか.
飯田先生の提示したオプションの中で,僕は「能力ある人材の選別にあたって学歴をスクリーニングに使うのは無駄が多い.もっと良い方法があるからお試しあれ」というのに与する.それは空論ではなく,企業のなかでマイナーな事例として,かなり出始めているのではないか.
結局のところ、企業にとってメリットがあれば職業能力による採用は行われますし、新卒採用ではメリットがないから学歴によるスクリーニングが行われているのではないでしょうか。

http://d.hatena.ne.jp/econ-econome/20060417#p1

お勧め。

こういった無駄な議論に飛びつく輩が多い事こそ問題だと思いますがね。

ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。

結論

過去の就職事情と現在の就職事情に詳しい議論参加者が(id:roumuyaさんが参加しなければ)田中先生しかいないんだから、最も暇人な事情通の田中先生が(取引費用がどうのこうの言わずに)具体的に取りこぼしのないエントリーを書いて片っ端からトラックバックすればお終いじゃないですか。
頑張れ田中先生。負けるな田中先生。

表現

「就職情報の大学間格差生成装置としての就職サイト」ってこれほとんど誹謗中傷じゃないですか。まあ、リクナビの社名は出さずにやっていますから訴えられる可能性はほとんど無いでしょうが。不用意にリクナビといっている人は注意した方が良いと思います。
本当はリクナビに聞けばそれで終わりだと思うんですが、そこまでする必要性も感じませんし、リクルートはあまり好きな会社じゃないのでパス。

個人的愚痴

就職活動関係の調査は調査費用がかさむので、やめたい。大赤字ですよ。
いつもはWeb2.0万歳とかいってそうな人がWebの暗黒面を叩いているのは面白い。Webには罪はないのですよ。

*1:良いのか悪いのかは私には判断できません

*2:いるかどうかは分からないのですが、そのことへの質問はスルーされていますね

*3:ヒント:個人情報

*4:なぜか、化学系の企業はわりと好不況関係なく必死に新卒を集めてますよね

*5:暗黒女帝という表現もありましたね

*6:トリックスターという表現も(略)

*7:それがコミュニケーション能力を目の敵にする理由では?と疑問を呈したら邪推のしすぎでしょうか